「まほうつかいのでしとつかいま」  魔法使いオズの弟子、ドロシーは、師のい ない家を守って暮らしている。  オズは魔法で動く人形を作るのが得意であ った。彼の創った人形の手入れをするのが、 弟子たるドロシーの務めだ。たまに手を休め て、部屋の隅にいる黒犬に話しかける。この 黒犬はオズの使い魔で、人語を解する。 「ねえ、トト。マスターは今、どこにいらっ しゃるのかしらね? お戻りはいつかしら?」 「だからあの世だって言ってんだろ。戻ると か無理だっつの」  使い魔トトは内心で溜息をつく。俺はあの 爺ィにハメられたのかもしれない。 『トト、ドロシーを頼むよ』  オズの最期の言葉はそれだった。トトはそ れを、契約に基づく命令と受け止めた。だか ら、オズの死後もこの家に残り守っている。  魔法人形作りの天才、オズの遺した最高傑 作――空気中のマナを取り込み、半永久的に 動く少女人形、『ドロシー』のことを。